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1-212サウルは死に、ダビデはアマレク人を打ち破って、ツィケラグに引き揚げて来ました。 その三日後、イスラエル軍から一人の男がやって来ました。 男は、破れた服をまとい、頭にちりをかぶっていて、ひと目で喪中にあるとわかります。 彼はダビデの前に出ると、深い敬意を表わして地にひれ伏したのです。
3 「どこから来たのだ。」
「イスラエルの陣営からまいりました。」
4 「何かあったのか。 戦いの様子はどうなんだ。」 ダビデは急き込んで尋ねました。
「イスラエル全軍は散り散りです。 何千という兵士が死に、また負傷して、野原に倒れています。 サウル王も、ヨナタン王子も殺されました。」
5 「王とヨナタンが死んだって! どうしてわかったのだ。」
6 「私はギルボア山におりましたが、槍にすがってようやく立っている王様めがけて、敵の戦車が突き進むのを見たのです。 7王様は私を見るなり、こっちへ来いと叫ばれました。 急いでおそばに駆け寄りますと、
8 『おまえはだれか』とお尋ねになります。
『アマレク人でございます』とお答えしましたところ、
9 『さあ、わしを殺せ。 この苦しみから救ってくれ。 虫の息で生き長らえるなんて、まっぴらだ』とおっしゃるのです。
10 そこで私は、もう時間の問題だ、と察したものですから、あの方を殺しました。 あの方の王冠と腕輪の一つを持ってまいりました。」
11 この知らせを聞いて、ダビデと家来たちは悲しみのあまり、めいめい衣服を引き裂きました。 12彼らは、死んだサウル王とその子ヨナタン、それに、神様の国民と、その日いのちを落としたイスラエル人のために喪に服し、泣きながら、まる一日断食したのです。
13 ダビデは、王の死を告げた若者に言いました。
「おまえはどこの者だ。」
「アマレク人でございます。」
14 「どうして、神様に選ばれた王を手にかけた」と、ダビデは詰め寄りました。
15 そして配下の若者の一人に、「こいつを殺せ!」と命じたのです。 若者は剣を振りかざして走り寄り、そのアマレク人の首を打ち落としました。
16 ダビデは言いました。 「自業自得だ。 自分の口で、神様がお立てになった王を殺した、と証言しおったのだからな。」
17-181718ダビデは、サウル王とヨナタンにささげる哀悼の歌を作り、のちに、これがイスラエル中で歌い継がれるように、と指示しました。『英雄詩』に載ったその詩を、次に紹介しましょう。
19 「ああ、イスラエル。
おまえの誇りと喜びは、しかばねとなって丘に横たわる。
大いなる英雄たちは倒れた。
20 ペリシテ人には告げるな。 喜ばせてなるものか。
ガテとアシュケロンの町にも極秘だ。
神様を知らない連中を勝ち誇らせてなるものか。
21 ギルボアの山よ、
露も降りるな。 雨も降るな。
いけにえのささげられた野にも。
偉大なサウル王が倒れた地だから。
ああ、その盾は油も塗られず打ち捨てられた。
22 最強の敵を打ち殺したサウル王とヨナタンは
空手で戦場から引き揚げたりはしなかった。
23 ああ、サウルもヨナタンもどれほど愛され、
どれほどすぐれた人物であったことか。
生死を共にした彼ら。
鷲よりも速く、ライオンよりも強かった。
24 さあ、イスラエルの女よ、サウル王のために泣け。
王はおまえたちを惜しげもなく着飾らせ、
金の飾りをまとわせてくれた。
25 その偉大な英雄が、戦いの最中に倒れたのだ。
ヨナタンは山の上で殺された。
26 わが兄弟ヨナタン。
おまえのために、どれほど涙を流したことか。
おまえをどれほど愛していたことか!
おまえの私への愛は、女の愛も及ばなかった!
27 ああ、勇士たちは倒れ、
武器は奪い去られた。」
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